え、田んぼに道路つくってるの?
違います。これは、お米をおいしく育てるための「溝掘り」です。
今日も金髪のイエロークリエイター、泥まみれ。でも、ちょっと幸せでした。
6月に入りました。
稲餅ふぁーむの田んぼでは、毎年恒例のお米作り作業が始まります。
その名も、溝掘り。
名前だけ聞くと、なんだか地味ですよね。
「溝を掘るだけでしょ?」と思うかもしれません。
でも、これがなかなか奥深い。
そして、なかなか泥深い。
足も機械も、心までズブズブいきます。笑
5月に田植えをしてから、約1か月。
小さかった稲たちは、少しずつ青々としてきました。
写真を見てもらうと、田んぼ一面に緑の列がスーッと並んでいます。
曇り空の下、遠くには五泉の山並み。
その真ん中で、黄色い帽子をかぶった金髪のイエロークリエイターが、田んぼの中を進んでいます。
はい、稲餅ふぁーむ7代目です。
見た目はちょっと派手。
でもやっていることは、かなり地味。
このギャップで今日も生きています。
田植えのあとは、しばらく田んぼに水をたっぷり張ります。
稲がしっかり根を張れるように、田んぼ全体で守ってあげる感じです。
でも、6月上旬から中旬になると、今度は少し田んぼの水を落とします。
これを「落水」といいます。
簡単に言うと、田んぼの水を抜いて、やわらかすぎる土を少し乾かす作業です。
なぜそんなことをするのか。
水を入れっぱなしにすれば楽そうに見えますが、稲にとっては、ずっと水びたしが良いわけではありません。
田んぼを少し乾かすことで、土の中に空気が入りやすくなり、稲の根っこが元気に育ちやすくなります。
人間も、ずっと布団の中にいたら気持ちはいいけど、体がなまりますよね。
稲も同じように、ちょっと刺激が必要なのかもしれません。
そこで登場するのが、こちら。
田面ライダー。

名前がもう強い。
農業機械というより、日曜朝のヒーローみたいです。
でも実際は、田んぼの中に溝を作るための乗用型の機械です。
機械と体の重さを使って、泥の田んぼにスーッと水の通り道を作っていきます。
昔は、歩行型の機械を人力で押しながら溝を掘っていました。
これが本当に大変でした。
腕の力で押す。
足は泥に取られる。
機械は思った方向に進まない。
そして心の中で「もう帰りたい」と3回くらい思う。
農業あるあるです。
今は乗用型になって、かなり体への負担は減りました。
それでも、楽勝かと言われると、まったくそんなことはありません。
写真のように、田んぼの中をまっすぐ進むだけでも集中します。
稲を踏まないように。
溝が曲がりすぎないように。
水がちゃんと流れるように。
金髪のイエロークリエイター、見た目はのんびり進んでいるようで、頭の中はけっこう忙しいです。

そして、溝掘り作業にはもうひとつ大事な仕事があります。
それが、交差点の泥を取る作業。
田面ライダーで縦と横に溝を作ると、溝が交差する場所ができます。
でも、その交差点に泥の壁が残っていると、水がそこで止まってしまいます。
せっかく水の通り道を作っても、交差点で詰まっていたら意味がありません。
そこで登場するのが、農家最強の技。
テデトール。
はい、手で取る。
そのままです。
最新機械も便利ですが、最後はやっぱり人間の手。
田んぼを一か所一か所歩いて、溝の交差点に残った泥を取っていきます。
これが地味に時間がかかります。
しかも、ちょうどいい土の硬さならまだいいんです。
少し固まっていれば、泥をポコッと取れます。
でも、やわらかいと大変。
ドロドロです。
手も足も長靴も、全部まとめて田んぼに持っていかれます。
「おーい、長靴返してくれー」
と、心の中で田んぼにお願いする瞬間があります。
でも不思議なもので、泥の壁を手で崩して、たまっていた水が一気にスーッと流れ出すと、なんとも言えない達成感があります。
ああ、つながった。
水が流れた。
田んぼが呼吸し始めた。
そんな感じがするんです。
たぶん、知らない人から見たらただの泥作業です。
でも農家から見ると、これは田んぼの中に小さな道を作っているようなもの。
水の道。
空気の道。
稲が育つための道。
地味だけど、ものすごく大切な仕事です。
今年は、この溝掘り作業を7代目がひとりで、数日かけてマイペースに進めています。
若い頃なら「一気に終わらせるぞ!」と気合いで突っ走っていたかもしれません。
でも今は、体の声も聞きながらやっています。
2020年3月11日に腎臓がんで左腎を摘出してから、無理をしすぎないことも大事だなと思うようになりました。
塩分控えめを意識しつつ、田んぼでは相変わらず泥まみれ。
人生いろいろあるけど、今日も土の上で生きています。
重く考えすぎると前に進めない日もあります。
でも、田んぼに出ると不思議と体が動きます。
曇り空。
青い稲。
泥のにおい。
遠くの山。
そして黄色い帽子。
派手なことは何もないけれど、こういう日常の積み重ねが、お米になっていくんだと思います。
稲餅ふぁーむは、新潟県五泉市で、米、れんこん、えごま、オクラ、レモンなどに挑戦している小さな農家です。
ありがたいことに「五泉八代目レンコン」は野菜ソムリエサミットで金賞をいただきました。
でも、受賞したから終わりではなく、むしろ毎日が勉強です。
お米も、れんこんも、野菜も、思い通りにならないことばかり。
天気に悩み、泥に悩み、機械に悩み、たまに自分の段取りにも悩みます。
でも、そのぶん小さな喜びが大きいんです。
水が流れた。
稲が伸びた。
芽が出た。
花が咲いた。
食べた人が「おいしい」と言ってくれた。
その一つひとつが、農家にとってはごほうびです。
家庭菜園をしている方にも、今日の話は少しだけヒントになるかもしれません。
植物は、水をあげればいいだけではありません。
水が多すぎても、少なすぎても調子を崩します。
大事なのは、根っこが元気に呼吸できる環境を作ること。
鉢植えなら、水はけ。
畑なら、土の状態。
田んぼなら、水の通り道。
見えている葉っぱだけでなく、見えない根っこのことを想像してみると、植物の見方が少し変わります。
食卓に並ぶ一杯のごはんも、ただ炊いただけの白い粒ではありません。
田植えがあり、溝掘りがあり、草との戦いがあり、暑い日も雨の日もあって、ようやくお米になります。
そう考えると、ごはん一粒がちょっと愛おしくなりませんか。
今日も田んぼの中で、泥にまみれながら思いました。
派手な農業じゃなくてもいい。
すごいことを言えなくてもいい。
毎日、目の前の田んぼと向き合って、少しずつ前に進めばいい。
金髪で黄色が大好きなイエロークリエイター。
ちょっと心配性で、でもチャレンジはやめられない50代。
そんな7代目が、今年も田んぼで汗をかいています。
これからも稲餅ふぁーむは、五泉の田んぼや畑から、ちょっと笑えて、ちょっと元気になる農業の日常を届けていきます。
お米が無事に育ちますように。
田んぼの水がうまく流れますように。
そして、読んでくれたあなたの今日も、少しだけ軽くなりますように。
よかったら、泥まみれな挑戦を、これからも見守ってください。

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